2023年度長岡青年会議所理事長 関光汰 チャンレジ

Challenge!
~情熱をもった勇気ある行動が希望を生み出す~

第69代理事長 関 光太

はじめに

 私たち長岡青年会議所はいつの時代も、どんな状況であっても、地域の課題解決に挑戦する組織であるべきです。地域に希望をもたらすことができるような組織でなければいけません。情熱をもった勇気ある行動こそが「希望」を生み出す、私はそう信じています。
 2020年から発生し、未だに終息の見えない新型コロナウイルスの蔓延。2022年2月から始まったロシアによるウクライナ軍事侵攻。そして同年7月、民主主義の根幹を揺るがしかねない元総理に対しての凄惨な銃撃事件。世界が、日本が今、社会の様相を一変してしまうような出来事に直面し、大きな変革と混乱の下に不安を抱えています。
 私たちは何をするべきなのでしょうか。自分たちには手に負えない問題だから行動せずに状況が改善することを祈ることでしょうか。誰かが大きな社会課題を解決してくれることを待つことでしょうか。
 社会に携わっている一人ひとりが問題や課題を意識し、行動を起こさなければ状況は変わりません。
 私たちは目の前の地域の課題に向き合い、夢あふれる社会の創造に向かって情熱をもって進み、希望を生み出す活動を行う必要があります。
 長岡の未来を考え実際に行動を起こすのは誰か。それはそこに住み暮らす私たち自身です。私たちは自分の大切な人や守りたいものがそこにあり、より良い未来を創りたいという想いがあるからこそ、まちのために行動を起こします。その想いが私たちの活動の原動力であり、想いをもって行う活動は誰に対しても誇れるものです。
 胸に誇りをもち、地域の未来のための活動に挑戦していきましょう。

地域を想う仲間と共に

 私は仲間とは「同じ目的を共有している人」という意味だと理解しています。私は長岡青年会議所に入会する前は、「友達」はたくさんいましたが、「仲間」と呼べる人は数えるほどでした。私たち長岡青年会議所メンバーは、入会のきっかけや物事の考え方は人それぞれですが、夢あふれる社会を創造するという同じ目的を共有している仲間です。一人では達成が難しいことでも、仲間と知恵を出し合い協力することで達成可能な道筋が見えてきます。目的を達成するためには仲間の意見を尊重し、活動の効果を高めることが出来るように良好な人間関係の構築や、有意義な議論ができ実行できる組織である必要があります。
 長岡青年会議所以外でも同じ目的をもって活動している方はたくさんいます。夢あふれる社会を創造するためには、長岡を想い地域貢献をしている方や団体と協力して活動をすることが必要です。同じ目的に向かってそれぞれがもっている特徴や強みを活かせた時、その活動は持続的に長岡を発展させることが出来る大きな運動に変わります。

地域に必要とされ続ける組織

 私たちは地域に必要とされ続ける組織であるべきです。必要とされなくなったとき、組織はその役目を終え、衰退し消滅していきます。私たちの活動が市民、企業、他団体、行政、あるいは家族に理解され、共感してもらい、応援してもらうために私たちはどうあるべきでしょうか。それは夢あふれる社会を創造するという本来の目的を見失わず、長岡の発展のための運動を起こすということです。
 人は何か目的をもった時、それを成し遂げるための方法を考え実行していきます。しかし、実行していく途中であまりにも難しい問題が起きたり、あまりにも複雑な手続きを踏まないと進めない場合、目的自体を諦めてしまったり、その問題の解決や手続きを進めること自体が目的のように錯覚してしまうことがあります。そのような状態では本来の目的を達成することは難しく、たとえ達成できたとしても莫大な時間を必要としてしまいます。私たちの組織でももしかしたら同じことが起きているのかもしれません。
 組織にはルールが必要です。ルールが無ければ秩序は崩壊し、組織としての機能は保てなくなります。しかし、時代が変わり社会情勢が変われば、様々な考え方や新しいやり方が出てきます。ルールは何をするためにあるのかを考え、現状のルールや意思決定のやり方が時代に合わない非効率なものであれば見直す必要があります。
 私たちの活動の効果を最大限に高めるためには様々な知見から物事を考え、メンバーの声、あるいは周囲の声に耳を傾け、他団体と協力して活動を進めることができる体制を整えることが必要です。時代や社会情勢の変化に柔軟に対応し、本来の目的を見失わない組織こそが地域に必要とされ続ける組織であり、私たちのあるべき姿です。

地域を想うリーダーの育成

 長岡の偉人、小林虎三郎は戊辰戦争に敗れ焦土と化した長岡で「国がおこるのも、まちが栄えるのも、ことごとく人にある。」と教育第一主義を唱え「米百俵の精神」を長岡に確立させました。どんな時代でもまちの中心には人がいて、人の集団がまちを形成しています。これは不変的な考えであり、人のいないまちはまちではありません。まちだけではなく、あらゆる組織にも当てはまります。私たち長岡青年会議所も20歳から40歳の「人」の集団であります。まちや組織がより良い未来へ進んでいく為にはそこにいる「人」の成長が必要です。
 青年会議所はメンバー同士が互いに育成しあい成長することから「学び舎」と例えられることがあります。JC活動はメンバーで活動費用を出し合い、自ら地域の課題や組織の課題を見つけ解決策を計画します。そして計画が適切な内容かを議論し、メンバー全員で計画した活動を実践します。その活動を通して発想力や実践力を身に着け、地域の文化や伝統、歴史に触れることで愛郷心を育て、友情を育むことから「学び舎」と例えられています。多くのメンバーが40歳で卒業をした後も、JC活動を通じて得た経験と人脈を活かし、地域あるいは企業のリーダーとして活躍をしています。多種多様な社会課題のある時代だからこそ組織や集団を力強く牽引し、目的達成へと導くことの出来るリーダーの存在が求められています。
 地域で解決しなければいけない問題が起きた時、率先して行動を起こすことが出来る愛郷心をもったリーダーが増えることは長岡の発展に繋がります。私たちは長岡の発展に寄与するリーダーを一人でも多く輩出できるよう、メンバーの育成に取り組んでまいります。

地域の魅力を若者へ届ける

 長岡市の人口は1995年の29万3千人をピークにその後は人口減少が続いています。その反面、65歳以上の老年人口の割合は増え続けている現状があります。人口が減少し、若者が減っていけば、各産業の働き手は将来的に減っていき、地域の経済は縮小していきます。経済が縮小すれば現状の行政サービス、社会インフラを維持することが出来なくなり、地域が衰退していく未来は容易に想像できます。
 長岡市は4大学・1高専・15専門学校があり、市外から多くの若者が数年間滞在しているという特性がありますが、卒業後に市内に就職する割合は約20%程度です。若者が卒業後に定住する場所を選択する大きな要因が就職先であることは言うまでもありませんが、コロナ禍でのテレワークの普及や、経済的な理由等で都心から地方への移住を考える方たちが増えている事実もあります。長岡に数年間滞在した若者が市外へ就職し、将来移住を考えた時の選択肢に長岡があるということは人口減少という課題を解決するための重要な要素です。長岡には「食」「自然」「歴史」「文化」など有形無形を問わず様々な魅力があります。若者に長岡の魅力を届け、人と人を繋ぎ、若者のもっている可能性を地域で後押しすることは長岡への定住、あるいは長岡にまた訪れてもらうきっかけとなります。
 若者の定住の促進は地域にとって深刻な課題であり、長岡市も就業・雇用環境や居住環境の整備、若者同士が交流できる施設の建設などの取り組みを進めています。地域と共に歩み続ける活動を続けてきた私たちのもつ強みを活かし、他団体と協力して若者へ長岡というまちがもっている魅力を届ける活動を展開してまいります。

無限の可能性をもつ情報発信

 どんなに魅力的な商品を創作しても、どんなに素晴らしい活動をしていても、どんなに家族や友達のことを大切に想っていても、伝えることが出来なければ自分の中の自己満足で終わってしまいます。同じ商品でも必要と思っている人に、その商品の魅力をうまく届けることが出来れば驚くほど商品価値が上がることもあります。商品だけでなく、何かの活動や人に対する想いなど、すべての価値や効果が情報発信のやり方で変わっていきます。スマートフォンの発明とソーシャルメディアの普及、そして新型コロナウイルスの感染拡大防止のためのソーシャルディスタンスが日常となった今、情報を誰にどのように届けるかということはあらゆるシーンで大きな役割を担っています。
 近年、NFT(非代替性トークン)やメタバースに代表されるブロックチェーン技術を基盤とした、「Web3」というインターネットの概念が登場しました。多くの企業や団体がWeb3の可能性を模索し、活用に取り組んでいます。市内でも山古志地域が「デジタルアート×電子住民票」としてのNFTを活用した、新たなまちづくりに挑戦しています。人口減少が避けられない中、新たなテクノロジーから様々な可能性を模索することは、まちづくり団体としても青年経済人としても必要な取り組みです。テクノロジーの発達により情報発信がもつ可能性が拡大した今、私たちの活動をより効果的なものとし、新たなまちづくりの可能性が見出せるような様々な情報発信の方法を研究し実践してまいります。

子供たちのために出来ること

 それぞれの地域にはそれぞれの歴史や文化があります。長岡も1868年に起きた戊辰戦争、1945年8月1日に起きたB29爆撃機による長岡空襲、2004年10月23日最大震度7を記録した新潟県中越地震を代表に、様々な戦災や災害に見舞われたまちです。私たちの先人たちは戦災や災害がある度に、弛まぬ努力と困難に負けない気概をもち、力強く復興を遂げてきました。その歴史と精神性からは戦争が起きた経緯と史実、平和の尊さや命の大切さ、困難に負けず復興を成し遂げた先人たちの気概をはじめ、多くの学びがあります。長岡に住んでいる子供たちだからこそ学ぶことのできる地域学習であり、愛郷心を育むことに繋がります。
 子供たちには無限の可能性があります。成長の過程で様々な夢をもち、その夢の実現のために長岡を、あるいは日本を飛び出し世界で活躍する子供も出てきています。夢を実現させるためには弛まぬ努力と多くの困難を乗り越える力が必要であり、長岡の歴史や精神性から得られる学びは、夢へと向かう子供たちの背中を後押ししてくれるはずです。
 私たちは地域社会と連携し、毎年8月1日に執り行っている柿川灯籠流しや市内の小中学校に対して実施している平和学習をはじめ、子供たちが長岡の歴史や精神性から学びを得て愛郷心を育む機会を多く創出してまいりました。本年度も子供たちが生まれ育った長岡でこそ得ることの出来る学びと愛郷心を、自身の財産とできるような機会の創出を地域社会と連携し実施してまいります。

過去から現在、そして未来へ

 戊辰戦争で焦土と化した長岡の復興と発展に大きく寄与したものの一つに「ランプ会」と呼ばれた会があります。士族の三島億二郎と商人の岸宇吉を中心に、年齢、身分を問わず官と民の垣根を超え、長岡の復興と発展のために必要なことを研究し議論をした会がランプ会です。その精神は受け継がれ、空襲で再び焦土と化した長岡の復興と発展のため、官と民が手を取り合い開催したものが「長岡復興祭」です。開催から75年以上経過した今でも、「長岡まつり」として、行政と市民の協働のもと毎年開催されています。新型コロナウイルスが蔓延し、各地の祭りが中止となった年でも開催を続けた長岡まつりは長岡市民の誇りとなっています。さらに、全国的に有名になり市外の方も多く参加していただける、長岡市がもっている最大の観光コンテンツという側面もあります。
 空襲後の困難な状況から市民を励まし、地域経済を復活させ、長岡市最大の観光コンテンツとなった長岡まつりは無限の可能性を秘めています。
 長岡市は先人たちから受け継いだ精神をもとに「市民と市は、協働のまちづくりを推進することにより、将来にわたり市民の更なる幸せな生活の実現を目指すものとする。」という基本理念を掲げた「長岡市市民協働条例」を制定しています。長岡まつりをはじめとする各地域で行われている祭りは、市民協働の最たるものであり地域の活性化には欠かすことができません。人口減少による地域経済の衰退が危ぶまれる今、私たちは先人たちから受け継がれてきた市民協働を実践し、長岡の発展の可能性を見出せるような未来へ繋がるまちづくり活動へ挑戦する必要があります。

最後に

 私が2014年に長岡青年会議所の門をたたいてから9年が経過しました。様々な人と出会い、様々な経験をさせていただきました。私が入会した当時は150名ほどいたメンバーも現在は100名程度です。経済的な問題、家族や人間関係などの様々な理由で、志半ばで会を去っていく仲間も多くいました。長岡青年会議所に限らずメンバー数の減少は日本全国の青年会議所で深刻な問題となっています。私は地域が衰退していくことと、その地域にある青年会議所の衰退は繋がっていると考えています。それは、私たちの活動は既得権益や利害関係がない、地域のためを想う人間が集まり行う「純粋な奉仕活動」だからです。その地域を想い行動を起こす人間が減っていけば地域は衰退していきます。
 人の命に終わりがあるように長岡青年会議所も20歳から40歳という年齢制限があり、入会した時から卒業までの年数が決まっています。限られた時間で私たちは何をすることが正解なのでしょうか。未来がどうなるかは誰にも分りませんが、今を生きる私たちの行動が未来へ繋がることは確かです。
 情熱をもった勇気ある行動こそが「希望」を生み出す、私はそう信じています。

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